6月8日から12日までフィラデルフィアで行われたアメリカ糖尿病学会(ADA)に行ってきました。学会が開かれるようなアメリカの大都市はどこも似ている感じがしてやや面白みに欠けるのですが、今回行ったフィラデルフィアはニューオーリンズとともに歴史を感じさせる好きな街です。市の中心にあるコンベンションセンターからは、シティーホールなど石造りの歴史的な建物を見ることができます。また、独立記念館や有名なリバティーベルも学会場から徒歩10分くらいの場所にあり、今回も昼休みを利用して見てきました。
[学会場からも見えるシティーホールです]
[リバティーベルの前の筆者です]
ADAには毎年2万人くらいが参加するそうです。日本糖尿病学会の2倍くらいの規模です。もちろんすべての発表を聞くことはできないのですが、今回私は自分の研究テーマである肥満インスリン抵抗性や慢性炎症に関連する発表を中心に勉強してきました。その中でも私にとって最も重要な話題は、ADAの学会賞であるBanting賞をハーバード大学のBruce Spiegelman教授が受賞されたことでした。チアゾリジン薬の受容体であるPPARgの発見者としてSpiegelman教授の名前をご存知の方も多いと思います。受賞講演では、最近の研究成果である脂肪細胞の‘browning’についての話を聞くことができました。褐色脂肪細胞には前駆細胞のレベルから白色脂肪細胞とは全く独立して分化するものと(古典的褐色脂肪細胞)と、白色脂肪細胞が褐色化(browning)するものの2種類があります。あらたに見出された後者を、Spiegelman教授らはBeige(ベージュ)細胞と名付けています。白色と褐色の間のようなイメージですね。Spiegelman教授の講演は、これまで私が聞いた歴代のBanting賞受賞者の中でも特に素晴らしいものであったと感じました。
今回の学会出張では、海外ならではのトラブルが多かったです。ケチの付き始めは、成田発ワシントンDC行きのUnited便が1時間程度遅れたことです。そのため、DC発フィラデルフィア便に乗ることができず、DCの空港内のホテルに1泊させられました。そこでも預け荷物が何時間も出て来なかったり、翌朝予定されていた飛行機がまた3時間以上も遅れたため、同行の瀧川先生の発表が間に合わなかったりと、ひどい思いをしました。
[発表には間に合いませんでしたが、ポスターは貼りました]
マイナートラブルもたくさんありました。中華街で入ったレストランにはビールが置いておらず、飲みたければ外で買って来るように言われました。指示された店は、隣にある全く普通のレストランで、食事もせずにカウンターで瓶入りのチンタオビールだけ買い、元のレストランに戻るという変な経験もしました。
[隣の店で買ってきたチンタオビールです]
また学会場で飲みかけのコーラをコングレスバッグに入れたら、蓋がきちんとしまっておらず大量にこぼしてしまい、コングレスバッグの中のノートやプログラムがいい感じのセピア色に染まってしまった、ということもありました。そもそも今回の出発前は、5月の糖尿病学会以降ほとんど休みがとれず、体力的には最低な状態でした。5年ぶりの帯状疱疹になってしまい、バルトレックスとロキソニンを飲みながらの旅行でした。色々な意味で思い出に残りそうな学会参加でした。
薄井 勲